Faylay~しあわせの魔法
翌日、昼前に急に帰還命令が出て、フェイレイたちは港に向かった。

そこには小型の白い飛行艇が停泊していて、それでギルドまで帰還せよとのことだった。

「珍しいな、飛行艇で帰って来いなんて」

普通は、急ぎの任務でもない限り歩きだ。それは最近街道にも現れるようになった魔族を退治するためでもあった。

「急ぎの任務が入ったのでしょうか?」

「うん、多分な。……ここにドラゴンが出るくらいだから、他にも凄いのが出てるのかも……」

そう言いながら飛行艇に乗り込むフェイレイの後ろで、リディルは青い空を見上げていた。


静かだった。

静か過ぎた。

「精霊たちが、いない……」

リディルの小さな声は、波の音にのまれて消えた。





セルティアギルドのセンタービル屋上にある飛行場に下り立ち、空を見上げたフェイレイたちは、驚きで目を丸くした。

「戦艦……なんでここに?」

真っ黒な外装の巨大な空飛ぶ戦艦は、セルティアギルドの街の真上にどん、と陣取っていた。そのおかげで太陽の光が丸々遮断されてしまっている。

巨大戦艦の周りを小さな──と言っても、フェイレイたちの乗ってきた飛行艇の十倍はある大きさだ──戦艦がいくつも飛んでいる。

「あの紋章は、皇家です。惑星王の星府軍艦隊……!」

戦艦の横に金色で描かれた不死鳥と王冠を模した紋章は、皇家のもの。

フェイレイとヴァンガードは顔を見合わせると、リディルの手を引いてビルの中へ入り、支部長室へと急いだ。
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