Faylay~しあわせの魔法
「あ、それより! リディルはどこか怪我しなかった? 大丈夫だった?」

フェイレイはリディルの細い肩を掴んで正面を向かせると、足の先から背中まで、ぱっぱっと素早く視線を走らせ、肩に置いていた両手で、ふわりとリディルの小さな顔を包み込んだ。

「ん?」

大丈夫か? と、ジッと顔を覗き込んでくるフェイレイに、リディルは翡翠の瞳を僅かに大きくさせ、無意識に息を止めた。

それから唇をきゅっと結び、そろそろとフェイレイの頬に手を伸ばした。今度はフェイレイの深海色の瞳が見開かれる。

リディルの顔を包んでいた手を僅かに離し、瞬きをさせると。

「……自分の方が、怪我、してる」

リディルがフェイレイの頬に触れ、そう言った。

「ん?」

言われてみれば、頬にピリピリとした痛みがある。先程の戦闘で木の枝にでも引っ掛けたのか、横一文字に大きく赤い線が入っていた。

「フォレイス」

リディルが呟くと、森の精霊フォレイスが2人ほど飛んできて、フェイレイの傷口に小さな手をペタペタ押し当てた。

フォレイスが触れた傷口は淡い緑の光を放ち、みるみる癒えていった。

「ありがとう」

フェイレイが礼を言うと、フォレイスは小さく手を振りながら針葉樹林の方角へ、ふわりと飛んで帰っていく。

それを見送った2人も、そっと視線を交わし合い、微笑みながら並んで帰路についた。


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