Faylay~しあわせの魔法
「セルティア王は10年前の災害時に、もうこのような惨事を引き起こしたくないと、各地に対魔族用にシェルターを建設されていたのだ。そこに全国民を避難させている。そしてギルドからも傭兵を出し、防衛にあたらせている」

「それは……星府軍がリディルさんを連れていっても、攻撃してくると……分かっていたってことですか?」

そうでもなければ、こんなに早い対応は出来なかったはずだ。

ヴァンガードの質問に、アリアはああ、と短く応えてから、

「そうなるだろうとは思っていた。だから昨日のうちにセルティア王に国民を避難させるようにとお願いしておいたのだ。ギルドだけなら何とでもなるが、国民のことは王でないと」

「じゃあなんでリディルを差し出したんだ!」

こうなることが分かっていて、わざわざリディルを危険な目にあわせることはなかったのではないかと、フェイレイが怒鳴る。

「……時間が足りなかったのだ。国民を避難させるために、時間稼ぎしなければならなかった。だから、お前に今暴れられても困ったのだ。まったく、人の作戦をぶち壊そうとしてくれて。向こうからの攻撃を防ぐために戦うのと、こちらから手を出すのとでは大きく意味が違うというのに。……ああ、久しぶりに動いて息が切れた。年は取りたくないものだな……」

ハア、と一息ついて、アリアは格納庫に停められている飛空艇を動かすよう指示を出した。

「本当は私が行くつもりだったが……」

「母さんが!?」

「かわいい娘のためだ。あいつら、リディルに何かしてみろ。ギッタンギッタンに殴りつけてボロ雑巾のように捨ててやる」

ふん、と鼻息を鳴らすアリアは、すっかりいつものアリアだった。

そんな母にフェイレイは少し嬉しくなる。
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