Faylay~しあわせの魔法
「侵入者か」

戦艦の司令官室にいたアレクセイは、士官からの報告に眉ひとつ動かさずに呟いた。

「目的は、動力室か」

「恐らくは。すでに護りは固めてあります」

「それでいい。殿下とエインズワースの様子は」

「特に変わりはありません。こちらにお連れいたしますか?」

アレクセイは少しだけ思案した後、言った。

「いや、いい。殿下にはお疲れであろう。煩わしい思いをさせたくはない」

まだ少女と言える年頃のリディルが、この事態を憂いていないはずはない。

セルティア国と引き換えにされた少女の命。だが、その約束は護られることはなかった。

第二の故郷とも言うべき国を焼かれるのは、彼女にとっては身を切られるような想いであろうと、アレクセイは不憫に思った。

もちろん、その情に流されることはないが。

アレクセイにとって皇家は絶対。

しかしそれ以上に、『カイン』という存在が絶対なのだった。

その惑星王カインの命令となれば、どんなに非道なことであろうと、やり遂げなければならない。

「陛下はこのセルティアの殲滅をお望みだ。攻撃の手を緩めるな」

「イエス・サー」

カッとブーツの踵を鳴らし、士官は敬礼をすると司令室を出て行った。


< 150 / 798 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop