Faylay~しあわせの魔法
ダン、と床を蹴り、一気に剣士たちを飛び越えると、ヴァンガードの背後に着地。彼を足で後ろへ蹴り倒すと、両手を挙げて剣士たちの剣を受け止めた。

「うりゃっ」

飛び上がるようにして剣を撥ね退け、それぞれの腹と首の後ろを叩いて倒す。

「大丈夫か、ヴァン!」

「大丈夫です……」

後ろに引っくり返って尻餅はついたが、魔銃を胸の前で構えたまま、ヴァンガードは力なく応えた。

そこに、また足音が響く。

「ヴァン、立て! 新手が来る!」

「は、はい」

剣を一本に戻し、ヴァンガードの腕を掴み、立たせる。

「えーと、どっち?」

「……そっちです」

もう方向が分からなくなったのかと呆れながらも、フェイレイに支えられて走るヴァンガード。

迫る足音から逃げるように走っていると、視界の端に黒いものが映った。

「ん?」

ずっと灰色の壁を見て走ってきたフェイレイは、違和感を感じて振り向いた。

そこには、人がいた。

黒いフードコートを頭からすっぽりと被ったいかにも怪しげな人物が、灰色の壁にぽっかり開いた穴から、腰を屈めてこちらを見ていた。

一瞬立ち止まってその人物を眺めてしまった。

フードの下にチラリと見える、赤い瞳と目が合う。
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