Faylay~しあわせの魔法
一筋の光もない暗闇の中、警戒しながら女性について進んでいくと、

「階段になります」

前からそう声がして、狭い階段をそろそろと上って行った。

「……どこに繋がってるんですか」

声を潜めてそう聞くと、前を行く女性は立ち止まった。

「ちょっとお待ちなさい。誰もいないか確認します」

そう言うと、先程と同じように真っ黒い壁に手を翳し、ポワン、と壁に穴を開けた。そこから頭を出して辺りを見渡すと、向こう側に出てフェイレイたちを手招いた。

「大丈夫です。いらっしゃい」

言われるままに外に出ると、そこは今までの灰色の無機質な空間ではなく、赤い絨毯の敷かれた、どこかの宮殿のような造りの廊下だった。

「ここは……」

「士官たちの部屋のある階です」

言いながら、女性は静かにするようにと、唇に人差し指を当てた。

「貴方たちに、お願いがあるの」

女性は静かな声で言った。

「え?」

「ここに、セルティアから連れてこられた皇女が捕らえられています。彼女を、ここから連れ出して欲しいの」

「……ええ!?」

フェイレイは思わず大声をあげ、「シー!」と言われながら手で口を塞がれた。

「どういうことですか!? 貴女は一体!?」

ヴァンガードは小声で追求する。

女性は辺りに視線を走らせながら、フェイレイの口から手を離した。

「ここでは見つかってしまうわ。いらっしゃい。皇女のいる部屋まで案内します」
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