Faylay~しあわせの魔法
黒いコートを引き摺りながら歩き出す女性を、訝しく思いながらも大人しくついていく。

リディルを連れ出して欲しい。

それは一体どういうことなのだろうか。

彼女は一体、何者なのだろうか……。


そんな疑問を湧き上がらせながら、フェイレイはふと、あることに気付いた。

目の前を歩く女性の頭の位置が、自分よりも、高いことに……。

「俺より身長高ー!!」

思わず叫んで、女性とヴァンガードに「シー!」と怒られる。

怒られながらも、フェイレイはズーンと落ち込んだ。

確かに、一般男性の平均身長よりは低い彼ではあるが。女性よりも小さいのかと思うと、何だか哀しかった。

「何でだ……父さんはデカいのに……母さんに似たのか、俺……」

ブツブツと陰気に呟きながら歩いていくと、大きな観音扉の前で立ち止まった。

「こちらですよ。……ああ、そうね。少しここで待っていて?」

女性はそう言うと、木製の扉を開けて中に入っていった。少し待っていると、すぐに戻ってくる。

「人払いをしました。もう大丈夫ですよ」

と手招きされ、フェイレイたちは恐る恐る部屋の中に入る。

グルリと辺りを見渡して、金の壁に様々な文様の描かれた色鮮やかな天井、大きなシャンデリア、ふかふかの絨毯……豪華絢爛な内装に唖然とする。

「お城みたいだ」

そう呟いて正面に顔を向けたとき。

ソファの隣に佇む、おだんごの形で左右に髪を結った、翡翠色の瞳をした素晴らしく好みの少女が目に映った。
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