Faylay~しあわせの魔法
「……何故、なのかしらね」

女性はそっと視線を床に落とした。

「私は、それが知りたいの。何故、カインは魔族と手を組むようになったのか。こんなにも人々を苦しめるのか」

両手を組み、ギュッと握り合わせる女性を、リディルは不思議そうに見上げた。

「貴女は、誰……?」

ずっと違和感がしていた。

この惑星の民は皆、皇都の皇帝陛下を『惑星王』と呼ぶ。

他の惑星との連絡を受け持ち、すべての国を統治する、この星の王に敬意を込めて。

だが、彼女は違う。ずっと『カイン』と、名前で呼んでいた。

それに、ここにいた侍女たちは、彼女に声をかけられただけで、すぐに退室してしまった……。

「ああ、ごめんなさい。まだ名乗っていませんでしたね」

女性は顔を上げ、ふわりと微笑んだ。

「私は、ローズマリーと申します。ローズマリー=サラスティ=……ユグドラシェル」

「ユグドラシェル……?」

皇都の名を冠するのは、皇族の証。

フェイレイとリディルが驚いていると、更に驚いたのがヴァンガードだった。

「ロ、ローズマリー様!? 貴女が、何故僕たちを!?」

顔を真っ青にして動揺するヴァンガードに、フェイレイは首を傾げた。

「どうした、ヴァン」

「どうしたって! フェイレイさんは知らないんですか!? この人……いえ、このお方は、皇后陛下ですよ! どうして陛下が、僕たちを助けようとするんですか!?」
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