Faylay~しあわせの魔法
「さあ~て!」

グッと柄を握り締めると、思い切り扉を叩き割った。

激しい音がして扉が吹き飛び、ドアの前にいた兵士たちは悲鳴を上げながら廊下に転がる。

それを見てから、ローズマリーの後ろに回りこみ、肩を抱くべきか、それとも腰に手を回すべきか少し迷っていると。

「少し屈みましょうか?」

ひそひそ声でそう言われる。

「結構です!」

フェイレイは少し背伸びをして肩に腕を回した。そして、ピタリとローズマリーの首に剣の刃をあてる。

「こ、皇后陛下!」

兵士たちが目を丸くして後退る。

その兵士たちの後ろに、あのアレクセイの姿もあった。

「ローズマリー様、何故この艦に」

黒い瞳を少しだけ見開いているアレクセイに向かって、ローズマリーは眉尻を下げて言った。

「ごめんなさい、アレクセイ。私、早くカインの妹に逢いたかったの。だって皇都に着いたら、もうお話すら出来なくなってしまうでしょう? それで、つい、こっそり忍び込んでしまいました」

「え?」

フェイレイも、ヴァンガードも、リディルも、驚いてローズマリーを見る。皇后陛下が戦艦に忍び込むという事態が、良く解らなかった。

アレクセイは眉を顰める。

「それでこの事態ですか」

「ごめんなさい。ごめんなさい、アレクセイ」

ポロポロと涙を流すローズマリー。
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