Faylay~しあわせの魔法
そうしながら、フェイレイの腹を肘で突付いた。早く言え、ということらしい。

フェイレイはすう、と息を吸い込むと、

「近づいたら皇后を殺すぞ! そこをどけぇ!」

半分ヤケクソに、悪人らしく聞こえるよう、怒鳴ってみた。

兵士たちは顔を青ざめさせて、後ろに立つアレクセイを振り返る。アレクセイは短く溜息をついた。

「通せ。手を出すな」

兵士たちはその言葉に従い、廊下の端に寄り、道を開ける。フェイレイはローズマリーを捕まえたまま、兵士たちを睨むようにして壁伝いに移動する。

「ヴァン」

小声でヴァンガードを呼ぶと、彼はハッとしたようにリディルの手を引いてついてきた。それを無表情で見守るアレクセイ。

「まさか、君がこのような手段に出るとは思いませんでしたよ」

アレクセイの言葉に、フェイレイはピクリと眉を動かした。

「あんたに言われたくない!」

リディルと引き換えに、セルティアを救うと言ったのに、まさかこんな攻撃を仕掛けてくるなんて。

睨みつけると、ローズマリーにつんつんと肘で腹を突付かれた。早くこの場を去らなければならない。

アレクセイに背を向けないようにし、リディルとヴァンガードを後ろに庇いながらゆっくりと後退する。

そうしてそのまま、階下へ続く階段を下りていった。

「元帥、いかがなさいますか!?」

兵士の声に、アレクセイは静かに言った。

「陛下に何かあっては困る。近づかぬよう、追いかけろ」

「イエス・サー」
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