Faylay~しあわせの魔法
兵士たちがバタバタと廊下を駆けて行ってから、アレクセイは一人微笑む。

「ローズマリー様にも、困ったものだ」

アレクセイには分かっていたのだ。あれがローズマリーの演技だと。

「……無事に逃げ果せてくださいよ」

そう呟き、踵を返した。





「うまくいきましたわね」

階段を下り、ローズマリーは楽しそうに言った。

「肝が冷えました」

ヴァンガードは心臓をバクバクさせながら息を吐き出し、リディルの手を引いていたことに気付いて、謝りながら手を離した。

「追っ手、来るかな」

そんなヴァンに首を傾げつつ、後ろを振り返り、リディルが言う。

「来るかもね。早いとこ、ヴァンのお父さんたちも助けないと」

フェイレイは通信機のマップを広げる。

緑の光の線で描かれた地図には、赤く光る印が2箇所あった。ひとつはリディルのいるこの場所と、それからヴァンガードの両親が監禁されている場所だ。

「あら、貴方のお父様って……エインズワースですの?」

「はい」

「そう。そうね、助けた方が宜しいわ。処刑なんて、かわいそうですもの」

ローズマリーはそう言うと、先頭に立って歩き出した。


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