Faylay~しあわせの魔法
「僕は……」

恨み言はジリジリと痛む喉の奥に詰まってしまい、代わりに涙が溢れ出した。

「貴方たちに、愛されていて、良かった」

泣きながら笑顔を浮かべたら、ビアンカに抱き寄せられた。そして父のオズウェルがその上から更に抱きしめる。

「すまなかったヴァンガード。辛い想いをさせた」

声を詰まらせながら謝る父のオズウェルに包まれ、ヴァンガードはもう、それだけで全てを許せるような気がした。

それを少し離れたところから見ていたフェイレイとリディルは、視線をかわし、微笑み合う。

「皆さん、皆さん、ちょっと宜しいかしら?」

親子の感動の再開に水を刺すローズマリーは、微かに聞こえてくる爆音に耳を澄ませた。

「早く脱出した方が良いですわ。護衛艦がギルドに向けて攻撃を始めました。これ以上激しくなると、外に出ても撃ち落されます」

「ギルドに」

そのことに全員の胸が痛んだ。

この艦には仲間たちが侵入してはいるが、動力室を破壊するには星府軍の攻撃を掻い潜っていかなければならない。

彼らはフェイレイたちよりも激しい攻撃を受けているはずだった。そう簡単には辿り着けないだろう。

それまでセルティアギルドは戦艦から攻撃を受け続ける。

──耐えられるのだろうか。

そんな不安が、頭を過ぎる。
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