Faylay~しあわせの魔法
動力室に応援に行った方が良いのかもしれない。

けれど、それは駄目だ。

フェイレイの任務は『リディルを救出すること』。

ギルドに所属する者は、自分に与えられた任務を完璧に遂行しなければならない。

もし今応援に行って、それでリディルをまた攫われてしまったら、元も子もないのだ。

「信じるしかない。母さんや、みんなを」

フェイレイは目を閉じてそう言うと、みんなの顔をグルリと見渡した。

「飛行艇を奪取する。それで逃げるんだ」

「分かりました。案内いたします」

ローズマリーは頷き、船倉から出て隠し通路へと向かった。

「私たちは精霊を召喚出来ない。足手まといになってしまう。置いていきなさい」

そう、オズウェルは言う。

いかに優秀な精霊士といえども、精霊たちの力が借りられない今は唯人と同じだった。だが、フェイレイは首を横に振る。

「駄目です。ヴァンの任務は、貴方たちを救出することだ。任務成功のためにも、ちゃんとついてきてくださいね」

フェイレイの言葉に、ヴァンガードは力強く頷く。そして両親の手を取ると、ぐい、と引っ張ってローズマリーの後を追った。

「よし、俺たちも行こう」

フェイレイもリディルの手を引いて走り出す。

「うん」

リディルは、フェイレイの手を握り返した。

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