Faylay~しあわせの魔法
「ヴァン、どっちだ! 北の大陸って!」

パニックに陥りかけているヴァンガードに声をかけると、彼はハッとしたように通信機で地図を出した。

「逆ですよ、逆! 旋回してください……いいいいい~!」

飛空艇はグルリと逆さまになり、青い空を下に見ながら、ギルドの白い飛行艇と星府軍の黒い飛行艇の間をすり抜けた。

「あれ? なんでこうなった?」

「あああ~もう~! 逆さまじゃないです! 旋回! せ、ん、か、い!!」

「千回?」

「なんですって? ちょ、回らないで~!!」

グルグルと錐揉み状に回転し、ついでにどこか触ったのか、ミサイルを発射させながら、飛行艇は護衛艦上空を通り過ぎた。

「……落ち着いて、ヴァン」

フェイレイの馬鹿さに更にパニックになるヴァンガードに、リディルが落ち着いた声音で語りかける。

「そうだ、落ち着けヴァン。さっきタウさんのに乗ってた時は全然平気だったじゃないか」

「パイロットの信用性の問題ですよ!」

また怒鳴るヴァンガードを落ち着かせようと、リディルは彼の手を取った。

「大丈夫。フェイなら何とかしてくれるから」

「そ、そんな……」

「ね?」

無表情で小首を傾げながら、ヴァンガードの手をギュッと握り締めてやる。

そして後ろを振り返った。
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