Faylay~しあわせの魔法
ヴァンガードはフェイレイから操縦桿を奪い、座席から叩き落すと、サッと辺りに視線を走らせる。

「お、ヴァン、出来んの?」

「貴方よりは、きっとね!」

計器類の中にあるミサイル探知機が赤く光っている。

後ろから迫ってきていることに気付いたヴァンガードは、スロットルを開け、操縦桿を引いた。

目の前を滑空する飛行艇たちを掠めるように上昇し、ミサイルは避けた黒い飛行艇に直撃した。

「ひゅう~! ヴァン、お前天才!」

と、ヴァンガードに抱きつくと。

「うるさいですよ! 後ろに座っててください!」

そう、怒られた。

すごすごと後ろにやってきたフェイレイに、リディルは笑みを向ける。フェイレイもそれに応え、微笑んだところで……。

「あれは!?」

ヴァンガードが声を上げた。

遠くの方から、徐々に空が暗く染まってきている。

「……魔族」

リディルが小さく呟く。

「魔族?」

ずっと目を閉じていたローズマリーも、目を大きく開けて、迫ってくる魔族の群れを眺めた。

遠くに見えていた暗い影はあっという間に眼前に迫り、飛行艇の傍をびゅんびゅんと通り過ぎていく。

大きな鋼鉄のような翼を羽ばたかせ、紫暗色の鱗を持つ、ドラゴンの顔をした魔族は。
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