Faylay~しあわせの魔法
「リンドブルム!」

突然目の前に現れたリンドブルムに、ヴァンガードは咄嗟に操縦桿を押した。

正面からぶつかるのは避けたが、ガシャアアン、と頭上の透明な屋根が、リンドブルムの鋼鉄よりも固い翼で破壊された。

ゴオオオと吹く風に体を押し付けられながら見上げると、リンドブルムはあちこちの飛行艇に襲い掛かっていた。次々に飛行艇が炎を上げて地上に落下していく。

「……カイン」

ローズマリーは唇を震わせてその名を呼んだ。

「私がいると知りながら、このような攻撃を……」

そう呟く間にも、我が物顔で空を飛び回るリンドブルムが襲い掛かってくる。

「リディル、俺のこと押さえてて!」

フェイレイは座席に片足を乗せて立つと、剣を引き抜いた。

「フェイ!」

リディルは彼が飛ばされないよう、腰にしっかりしがみつく。

真横に構えた剣に青白く光る闘気を送り込み、それを飛んでくるリンドブルムに向けて放った。

それはリンドブルムのライオンのような鼻に当たり、ギャアア、と悲鳴を上げて顔を背けはしたが、撃墜するまでには至らなかった。

更に後方より別のリンドブルムが襲い掛かる。

それにも同じように闘気をぶつける。ドラゴンと同じ硬い鱗は、並みの攻撃では倒すことは出来なかった。おまけに空を高速で飛ぶ飛行艇の上では風圧が邪魔をして、力を出しきれない。

「ああ、精霊たちが、力を貸してくれるなら……!」

後部座席で呟くオズウェルの悔しそうな声を聞き、リディルは顔を上げた。


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