Faylay~しあわせの魔法
その衝撃で、グルグルと機体が回転する。

フェイレイは自分にしがみついていたリディルの手から力が抜け、腕の中からすり抜けていきそうになるのに気付き、必死に抱きかかえて座席にしがみついた。

下降しながら回転する激しさから、エインズワース夫妻のシートベルトが外れ、2人は外に放り出された。

機体を何とか水平にしようとしていたヴァンガードは、遥か下へと落ちていく両親の姿を目撃する。

「父上! 母上ー!」

だが、どうすることも出来ない。

「うわあああああああ!!」

ヴァンガードの叫び声が大音響の響き渡る青い空に木霊する。

それを聞いたリディルは、ぼんやりとする意識をなんとか繋ぎとめ、地上に向けて手を伸ばした。

それに気付いたフェイレイが声を上げる。

「駄目だ、そんなことをしたら!」

精霊の女王を召喚するだけで消耗する体力。坑道で氷の女王を召喚したときだって、すぐに倒れてしまったのだ。それなのに、同時にもうひとり喚ぶなどと、自殺行為だ。

「風の名を謳う、我が名はリディル。名の契約に従い、血の盟約に応えよ、ロイエ・グィーネ!」

静止の声も聞かず、リディルは風の精霊グィーネの女王を召喚する。

現れたグィーネは、落ちてゆく夫妻を、両手を広げてふわりと包み込んだ。

「ヴァン、急げ! お父さんたちを助けるんだ!」

フェイレイの声に、ヴァンガードは「分かってます」と、操縦桿を押した。

ゴウ、と飛行艇は旋回し、急降下して宙をゆっくりと降下していくエインズワース夫妻に追いついた。

それにフェイレイとローズマリーが手を伸ばし、飛行艇の中へ連れ戻す。


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