Faylay~しあわせの魔法
その途中で、スッと屈む。

座席に座っているローズマリーの膝に頭を乗せて、リディルが眠っていた。

「どう?」

フェイレイの問いに、ローズマリーは首を横に振った。

「呼吸はしていますけれど、とても弱々しいわ。……大丈夫、命に別状はありませんわよ」

ローズマリーは不安そうなフェイレイに柔らかく微笑みかける。

「ただ、体に負担がかかりすぎましたのよ。一度に2人も女王を召喚だなんて。特にウィルダスのような防御系の精霊の召喚は、攻撃を防ぐぶん、体への負担も大きいですもの。皇族として目覚めたばかりのこの子には、荷が勝ちすぎましたのよ。今は、休ませておくしかありません」

「……うん」

フェイレイは頷くと、リディルに顔を近づけた。

口付けでもするのだろうかと、その様子を伺っていたヴァンガードはドキドキしたが、そうではなかった。

フェイレイは自分の額をリディルの額にこつん、と当てると、「んん~!」と唸りだし、

「元気、転送!」

と叫んで、顔を上げた。

「たまってる海水、かき出すから」

「ええ、頑張って、英雄さん」

「勇者!」

軽く手を振って、フェイレイは裸足で駆けて行く。その途中、また立ち止まり、エインズワース夫妻に声をかけていった。

オズウェルは起き上がっていたが、ビアンカはその肩に寄りかかり、まだぐったりとしている様子だ。

フェイレイはヴァンガードを手招きした。



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