Faylay~しあわせの魔法
「お父さんたちと一緒にいるといい」

近づいてきたヴァンガードにそう言うと、フェイレイはその後ろにある入り口に腰を屈めて入っていった。

それを見送ると、オズウェルに座るように促された。

ビアンカを挟むようにして腰を下ろすと、親子はしばし見つめ合い、そして無事を喜ぶように微笑みあった。

「さっきまで浸水していたんだ。着水したときに機体が損傷したらしくてな。フェイレイ君が夜通し直してくれたよ」

「え……そう、なんですか」

「彼は凄いな。私が目覚めたときにはもう、現在地と全員の無事を確認して、浸水を止めるために、穴を塞ぐ荷物をかき集めていたよ。さすが、支部長の息子さんだ」

そう言うオズウェルに、ヴァンガードは過去の痛みを思い出す。

そして、顔をあげた。

「違いますよ。支部長の息子だからじゃありません。フェイレイさんは、フェイレイさん自身が、凄いんです」

以前フェイレイに言われた言葉を思い出しながら、硬い口調でそう言うと、オズウェルは柔らかな笑みを見せた。

優しく頭の上に置かれる手に、ヴァンガードは思わずビクリと体を震わせてしまう。

それを見てやや苦笑しながらも、オズウェルは優しい口調で言った。

「お前も、よくやった。被弾しながらこうして全員無事にいられるのは、お前のおかげだ」

「父上……」

穏やかな波の音のように、ヴァンガードの心も、少しずつ穏やかになっていった。

こんな風に父に褒められる日が来るなんて、思いもしなかった。
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