Faylay~しあわせの魔法
凪いだ青い海を視界の端に捕らえながら笑みを浮かべたヴァンガードは、すくっと立ち上がった。

「父上、僕、フェイレイさんを手伝ってきます」

「ああ、そうしなさい」

頷く父に更に喜びを噛み締め、フェイレイのいる船倉へと下りていった。




「おりゃあああ~!」

フェイレイは掛け声とともに、船倉にひたひたと入り込んだ海水をバケツに汲んで、ガラリと開けた搭乗口から放り出した。

何度も何度もそれを繰り返していると、ぴたり、と頬に冷たい感触がした。

手を休めて頬に手をやると、むにむにと柔らかいものが触れ、それを引き剥がした。

「……ファリガ!」

青く透き通る長い髪を持つ小さな精霊は、海の精霊ファリガ。

泡沫のような模様のついたドレスをひらりと靡かせたファリガは、フェイレイの瞳と同じ深海色の大きな目をパチパチと瞬きさせた。

今まで星府軍に怯えて隠れていた精霊たちが現れた。ということは、星府軍はセルティアから退いたのだろうか?

そんな希望が出てきて、フェイレイは笑顔になった。

それに呼応するようにファリガもにこりと微笑む。

そして登場口や丸窓から、同じような精霊がひょこひょこと顔を出し、船倉にたまった海水の中に飛び込んだ。

彼女たちが小さな手をぐん、と上に伸ばすと、海水は細い糸状になって宙に浮かび、渦を巻いて外へと運び出されていった。

「おおおお、凄い、凄い!」

感激して手を叩くと、ファリガたちはニコニコ笑ってコクコク頷いた。

その様子を、手伝いに来たヴァンガードも目撃する。

< 192 / 798 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop