Faylay~しあわせの魔法
「精霊たちが……」

信じられない光景だった。

精霊たちが、召喚されたわけでもないのに人に力を貸している。

フェイレイの周りを飛び交う精霊たちは、すっかり元気を取り戻したようで、にこやかに微笑みながら海水を運んでいる。

「こんなことって、あるんですね」

「ああ、ヴァン」

ヴァンガードに気付いて、フェイレイは振り返る。

「精霊が自ら力を貸すなんて」

「……そういうもんだろ?」

「え?」

「精霊って、困ってると助けてくれるよな。親切な種族だよ」

「そんな。……在り得ませんよ」

「そうかー? 昔から、助けてもらってるけどな?」

掌の上にファリガを乗せて、フェイレイは言う。

「リディルを見つけられたのも、精霊が案内してくれたからだし」

そう話す間にも、ファリガたちはフェイレイにペタペタとくっついてくる。

それを見てヴァンガードは眉を潜める。

「……精霊たちの力をこの世界に現すには、人の魔力が必須。そうでなければ、精霊たちの命を削ることになる。……そう、習いましたけれど」

「え?」

「どういう仕組でそうなっているのかは分かっていません。ですが、気高い精霊たちが自分たちの命を削ってまで力を貸すって、相当なことだと思いますよ」

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