Faylay~しあわせの魔法
ヴァンガードの言葉を聞いて、フェイレイは顎に手をやり、考え込む。

「そうかー。これ、穴開いてるからな。無理に進もうとすると、沈むかもしれないな。……大きな船に乗り換えるしかないか」

「それも無理です。僕たちにはIDがありません」

「……そうだった」

民間の船に乗るには、身分を証明するIDが必要だ。

それを手に入れるために父、ランスのいるオースター島に向かっているのだ。

「とりあえず、アライエルに向かうのが良いと思いますよ。このままこの飛行艇で動いても、星府軍に見つかる可能性が高いですし」

「そうだな。うん、そうしよう」

そう話をつけると、フェイレイはファリガたちに礼を言い、搭乗口の扉を閉めた。

そして濡れた床を拭いた後、みんなのいる操縦室へと上がった。



精霊の力で艇を動かしているオズウェルたちに礼を言い、とりあえずの進路を伝えると、ローズマリーの前に座った。

後ろ向きに座り、相変わらず泥のように眠るリディルを眺める。

顔色も青白いままで、ピクリとも動かない。ただ、優しく吹く潮風に、ハニーブラウンの前髪がサラサラと揺れていた。

風の精霊グィーネたちも、心配そうに彼女の周りを飛んでいる。

「随分精霊に好かれていますのね。皇女だから……ではないのですね。この子自身が」

ローズマリーの言葉に、フェイレイは嬉しそうに頷いた。

「精霊は優しい人が好きなんだ。リディルもそうだ」

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