Faylay~しあわせの魔法
「だったら、俺たちも結婚しててもおかしくないんだ……」

と、眠り続けるリディルに目をやる。

リンゴーン、リンゴーンと教会の鐘が鳴り、少しだけ妄想の世界に飛び立ってしまったところに、ローズマリーの話が再開される。

「カインはとても優しくて美丈夫で、それにとても聡明で。そして私を一番に愛してくださいました」

惚気にも聞こえるその話を、フェイレイは愛想笑いを浮かべながら聞いた。だが。

「初めての夜伽のお相手のときなど、もう心臓が張り裂けそうなくらい緊張いたしましたけれど、でもカインは……」

「あの」

何だか話があやしくなってきたので、さすがに手を挙げて止めた。

「そこまでリアルに話さなくて結構です。ていうか、やめてください」

同じ年頃の男子たちと話すならともかく。

相手は皇后陛下、そして惑星王の話である。

興味はあるが、畏れ多すぎて、聞いたら罰が当たりそうだった。

「まあ……そうですか?」

ローズマリーは少しガッカリしたような表情になったあと、キュッと顔を引き締めた。

「でも……最近は、確かにおかしかったのです。私を近づけようともしなくなって。……いつからかしら。皇都の民への増税をした頃からは、すでに……何かに怯えていたようだったわ」

「怯える?」

「そう。怯えてた。……増税に意義を申し立てたのです、私。そうしたら……『ここに民を住まわせてはいけない』って……どうしてそんなことを言ったのか、私には分かりませんでした。けれど、アレクセイは、カインの言う通りに、と」
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