Faylay~しあわせの魔法
大柄な男に続いて、フェイレイが先に立って歩き出す。その後ろをリディルを抱えたローズマリー、更に後ろをエインズワース親子。

ヴァンガードは不安でいっぱいだったが、母のビアンカはもっと不安そうな顔をしていたので、そっとその手を握り締めた。

「大丈夫ですよ、僕がついています」

「ヴァンガード……」

頼もしい息子の言葉に、ビアンカは嬉しさを隠しきれず、笑みを浮かべる。

「強くなりましたね」

と、手を握り返す。

それを、オズウェルも目を細めて見守る。



ずっと鉄骨で組まれた細い通路を歩いていくと、急な階段が現れた。

ローズマリーに大丈夫かと目で確認を取りながらそれを登り、鉄製のドアをすり抜けると、両脇に船室がズラリと並んだ廊下に出た。

それを更に進み、階段を登って眩しい陽の光が照る甲板に出る。

下のドッグもかなりの広さだったが、甲板も相当広い。舳先に立つ海賊たちの姿が、マッチ棒くらいにしか見えない。

「船長~!」

木製の甲板の上を、ドンドン足音を響かせながら歩く大柄な男は、太いマストの下の床に直に座り込む男に声をかけた。

「『パーレイ』だ。客人だぜ~」

「ああ~?」

船長らしき男は、面倒臭そうな声を上げ、座ったまま肩越しに振り返る。

白いシャツに黒いズボンを履いた三十前後くらいの男は、左目に黒い眼帯をしていた。

肩ほどに伸ばしたクセのある茶髪が海風に揺れている。

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