Faylay~しあわせの魔法
「……この船は、どこまで行くんだ?」

フェイレイは静かに質問した。

「あ? それを聞いてどうするよ? ……いつも、この辺りをウロウロしてるけどな。たまにアライエルの港に寄ったりもするが」

「アライエルか……なら、そこまで俺たちを乗せていって欲しい」

「……それが願いか」

「そうだ」

「ふん……」

船長はしばらく、フェイレイを眺めながら考え込むような素振りを見せた。

「それで、その対価は?」

「対価?」

「乗船賃だよ。お前たち6人、タダで乗せてやるってわけにはいかねぇ。報酬は貰わないとな」

「金……」

金はない。

そもそも、IDがないのだ。

フェイレイが貯めたお金はすべて置いてきてしまったし、戦闘用飛行艇に金目のものが入っているとも思えなかった。

金がない、と判断した船長は、はっと息を吐き出して笑った。

「金はない。なら、どうするよ? その身体で払ってもらたって構わねぇぜ? 女、子供は高く売れるんでね」

無精髭をさすりながらニヤリと笑う船長に、後ろにいたヴァンガードたちが顔を引きつらせた。

ローズマリーはフェイレイを見つめる。

2人で海賊たちをぶちのめし、精霊士たちに援護してもらえば、力ずくで抑えられないこともない。

だが、目の前の船長は少しやっかいだ。

それに、フェイレイはまだ、戦う気はないように見える……。
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