Faylay~しあわせの魔法
「船長!?」

「まあ、黙れよお前たち」

船長は右手を挙げて、周りにいる海賊たちを制した。

「何やらのっぴきならねぇ事情がありそうだ。事情によっては手を貸してもいい。ただし、俺たちは海賊だ。海賊には、海賊なりのルールってもんがあるのさ」

「……あんたを倒して、船長になれって?」

「この船を乗っ取りたいなら、な」

フェイレイは顎に手をやり、しばらく考えた。

「なあ、この船。流氷も掻き分けて進めるのか?」

「もちろんだ。世界一の船だぜ。なあ?」

船長の言葉に、船の上には男たちの勇ましい声が響き渡った。

「なら、このままオースター島まで行けるな」

「まあ」

ローズマリーが目を丸くした。

「星府軍が俺たちを探しているのなら、見つけられにくいところから行くのがいい」

「まさか海賊船に……なんて、あまり考えませんわよね」

ふふ、とローズマリーは軽く笑った。

フェイレイの顔が、この船に乗り込んだときから徐々に変わってきている。

能天気なただのお子様から、頼もしい『男』の顔へと。

ついてきて正解だった、とローズマリーは赤い唇をたわませた。

あのリンドブルムを一撃で倒す人間を、アレクセイ以外では初めて見たのだ。ここは彼に賭けてみようか。
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