Faylay~しあわせの魔法
現れたのは、肩まである水色の髪が印象的な線の細い少年で、魔銃士養成学校の黒い制服を着ていた。

ブライアンに付き添われてアリアの前まで歩いてくる少年は、チラリとびしょ濡れのフェイレイに目をやった後、支部長に頭を下げた。

「よく来た、ヴァンガード」

アリアはヴァンガードに微笑みかけると、フェイレイに目をやった。

「魔銃士候補生、ヴァンガード=ユウリ=エインズワース。12歳だからお前たちと同じ、最年少候補生だ」

「へえ~!」

フェイレイは感嘆の声をあげた。

「お前、凄いんだな」

瞳を輝かせるフェイレイに、ヴァンガードは小さく笑みを作った。

「貴方の武勇伝はいつも耳にしています、フェイレイ=グリフィノー。お会いできて光栄です」

と、細い手を差し出した。

「あ、どうも」

フェイレイも手を差し出したが、先程被った水のせいで掌はビショビショだった。慌ててズボンのおしりのあたりにこすり付けてみたけれど、やはりビショビショだった。

「ごめん、濡れてる」

「構いません」

ヴァンガードはにっこりと笑い、フェイレイの手を握った。

その後、ヴァンガードはリディルの元へも挨拶に行く。

「お会いできて光栄です、リディル=カーヴァンス」

差し出された手に、リディルはそっと手を重ねた。その手を見つめながら、ヴァンガードは呟く。

「貴女のような、精霊士に憧れていました」

それを呟く少年の口元と眉は、僅かに歪んでいた。
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