Faylay~しあわせの魔法
何度も海に落ちそうになるフェイレイを、厳しい表情でジッと見守っていたローズマリーは、ふっ、と表情を崩した。

「そろそろ反撃出来そうですわよ」

「え?」

「やはり、この子の『勇者』ですのね」




時間の経過とともに、不規則に揺れる足元が、だんだんと“当たり前”に感じてきた。

重力の変化にうまく身体の動きを合わせ、足裏を滑らせるように鉄骨の上を進む。

ザザン、と響く波音に混じる高く、低く唸る風を肌で感じ、剣を素早く振ると、クラーケンの足が暗い海の向こうへと飛んでいった。

足裏に神経を集中させて踏み込み、一旦後ろへ退いていたブラッディの懐に飛び込む。

ブラッディも反撃してきたので、剣は中央で交わり、鍔迫り合いとなる。

「来たな」

ブラッディが目を輝かせた。

剣に重みがある。ちゃんと踏み込めるようになった証拠だ。

「そうこなくちゃあ、面白くない」

唇の端を上げたブラッディは、腹の底から“覇気”を噴出させる。

ゴウ、と空気が唸り、襲いかかろうとしていたクラーケンを、それだけで弾き飛ばした。

フェイレイもそれに押されてズササ、と後退するが、すぐに反撃に出る。

「はあっ!」

闘気を込めた剣を横一文字に振り切ると、風の刃が飛び出してブラッディに襲い掛かった。

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