Faylay~しあわせの魔法
「あのピンクの姉ちゃんでも良かったんだが、俺はお前さんが良かったんだよ」

「なんで」

「俺は、美女には弱いんだ」

激しく剣を交わらせながら、ブラッディは照れたように笑った。

そんな暢気な会話も、徐々に少なくなっていく。


そしてとうとう、無言になった。

祈るようにその戦局を見守っている仲間たちも、海賊たちも、いつの間にか静かになっていた。

一進一退の攻防を見つめ続けて、一体どれくらい時間が経っただろうか。

気がつけば、空が白みだしていた。

海にいるクラーケンも、何度も足を斬られたためか、少し前から獲物を諦めたかのようにジッと海の底に潜んでいる。

ギイン、と重い音を立てて互いの剣を弾くと、少し距離を取り、双方動かなくなった。

大きく肩で息をし、剣を構える姿からも最初の勢いは感じられない。虚ろになった瞳や全身から、疲労が滲み出ていた。

それでも、退けない。

「うああああっ!!」

渾身の力を込めて、ぶつかり合う。

と、その時。

ジッと鳴りを潜めていたクラーケンが、舳先から海ごと盛り上がってきた。

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