Faylay~しあわせの魔法
ローズマリーは甲板に座り、リディルを抱えながら彼女の頬を軽く叩く。

「リディアーナ!」

「リディル!」

駆け寄ってきたフェイレイも彼女の名前を呼び、顔を覗き込む。

先程までは確かに正常に戻っていた息遣いが、再び弱まってきていた。小さく呻きながら、身体を小刻みに震わせている。

「リディルさん、どうしたんですか!?」

ヴァンガードも傍に寄り、リディルの顔色の悪さに動揺する。

「さっきまでは大丈夫でしたのに。どうして急に」

「フォレイスを召喚してみます」

ビアンカ、そしてオズウェルが、ありったけの力を込めて癒しの力を持つフォレイスたちを召喚する。

そうしているところにブラッディが足を引き摺りながらやってきて、リディルを見下ろした。

「オイ、あんたら……『リディアーナ』っつったか?」

「え?」

ローズマリーやヴァンガードが顔を上げると、隻眼のブラッディは右目を細めてよくリディルの顔を見ようとしていた。

「この顔……間違いねぇ。リディアーナ様、生きておられたのか!」

「貴方、この子を知っていますの!?」

ローズマリーは警戒して、リディルを強く抱きしめる。その様子に、ブラッディは軽く首を振る。

「安心しな、敵じゃねぇよ……。俺は……元星府軍にいたんだ。カイン様の命令で、リディアーナ様とエインズワースのジイさんに手を貸した」

「なんですって?」

ローズマリー、そしてエインズワース親子は目を丸くしてブラッディを見た。

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