Faylay~しあわせの魔法
「……なんだ、これ」

白い肌に広がる、黒い痣。それは赤黒く光りながら、蜘蛛の巣のように徐々に白い肌に広がっているようだった。

その度にリディルは苦痛の吐息を漏らす。

「そんな……。怪我がないか確認したときは、ただの痣でしたのに……」

「痣だった?」

リディルの怪我の確認はローズマリーに任せていたので、フェイレイは直接確認していなかった。

「ええ。きっと、ウィルダスを介して出来たものだと思って……」

リンドブルムの攻撃の一切を請け負ったウィルダスの痛みを、女王を召喚するにはまだ未熟なリディルはそのまま受け止めてしまっていた。

それは体力の回復とともに、消えてなくなるはずのものだ。しかし。

ウィルダスを消し去ったあのときの攻撃は、女王の鳩尾に直撃していたのを見た。

「……惑星王だ」

フェイレイはそう直感する。

「あのとき何かされたんだ」

あの攻撃で。

リディルに何か傷をつけていった。

「何なんだ、どうすればいいんだ」

黒い痣に触れようとすると、バチッとプラズマが散った。黒のグローブがチリリと焼ける。

フォレイスたちも懸命に傍に寄ろうとはしているものの、どうしても弾かれてしまう。力を送り込むエインズワース夫妻の表情も険しくなっていく。

「リディルさん、しっかりしてください!」

ヴァンガードも祈るように叫ぶ。

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