Faylay~しあわせの魔法
「くそ、何なんだこりゃあ。おい、船医呼んでこい!」

ブラッディの言葉に、海賊たちも走る。

しかし、誰も成す術がない。

徐々に広がっていく痣を、止めることが出来ない。

「……フェイ」

そのとき、リディルがか細く、その名を呼んだ。

「フェイ、たすけ、て」

「リディル」

どうしたらいいのかなんて、分からない。

だが、この痣さえ消えてなくなれば──その思いから、フェイレイはリディルの手を握り締めると、片方のグローブを歯でくわえて引き抜いた。

そして、リディルの白い肌の上を這う黒い痣に、手を翳した。

すると、ぶわ、と青白い炎が噴出し、フェイレイの手を焼きつくそうとした。その熱に顔を歪めながらも、見えない敵の力を押し返す。

「惑星王……リディルを……苦しめるな……!」

身体の奥底から力を振り絞り、黒い痣に触れる。

途端に、青白い炎が一気にフェイレイを取り巻いた。






リディルは、冷たい水の底を歩いているような感覚でいた。

辺りは真っ暗闇で何も見えず、凍えそうなほどに寒い。

両腕をさすりながら恐る恐る進んでみると、水の抵抗を受けているかのように、前に進むことが困難なことが分かった。

何だろう、ここは。

疑問に思いながらも、どんどん不安な心が大きくなる。

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