Faylay~しあわせの魔法
そこへオズウェルたちの召喚したフォレイスたちが、緑の光を纏わせて次々に飛びついた。

彼は酷い火傷を負っていた。

飛び出してきた青白い業火に焼かれ、一時はもう駄目だと思った。

「フェイレイさん、リディルさん」

顔を歪めるヴァンガードに、ローズマリーは優しく声をかける。

「大丈夫、もう、大丈夫よ。……カインの気配は、もう、しないから……」

リディルの身体に蔓延っていた黒い痣は、何故か綺麗さっぱり消え去っていた。胸元まで捲れ上がった衣をそっと戻してやり、顔を上げる。

「船長さん、この子たちを休ませる場所が欲しいのだけれど」

「ああ、すぐに用意させる。しかし……なんだったんだ、今のは……」

苦痛に顔を歪めるリディルの痣にフェイレイが手を翳すと、そこから青白い炎が巻き上がり、彼を包み込んだ。

それに誰も、精霊ですら近寄れず、ただ苦痛の叫びをあげるフェイレイを見守るしか出来なかったのだが。

突然、フェイレイの翳した掌の下から光が飛び出してきて、それが炎を消し去ってしまった。

するとリディルの顔色がみるみる改善され、フェイレイの呼びかけに目を開けたのだった。

「私にも、よく分かりませんわ。でも……」

ローズマリーは倒れながらもリディルの手を離さない、フェイレイの寝顔を眺めた。

「この子達は引き離してはいけない気がします。……絶対に」



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