Faylay~しあわせの魔法
「剣士だけ前線に出て、精霊士はインカムを使用してのサポートに徹する……。まあ、確かに特殊ではあるのだがな……」

アリアが言葉を濁すと、ヴァンガードがスッと前に出た。

「すみません、無理は重々承知しています。ですが、父の意向で……お二人には、ご迷惑だとは思いますが」

「ヴァンのお父さん?」

いきなり愛称で呼ばれ、ヴァンガードは少し戸惑いを見せてから、頷いた。

「ええ。エインズワース家はギルド創設時からずっと、優秀な精霊士を輩出してきた名門です。ですから、その名を護るために、僕をギルド支部長のお子さんたちと仲良くさせたいんです。おまけに、フェイレイさんたちは支部長の身内という肩書きなど必要ないくらいの実力者ですからね。そんなパーティに入れば自然とエインズワースの名前も売れる。……そういうことです」

さらさらと流れるように説明するヴァンガードを、フェイレイはポカンとしながら眺めていた。

「まあ……そういうことだ」

ヴァンガードを見下ろし、アリアは苦笑する。どうやら裏で大人の取引があったらしい。

「どちらにせよ、そろそろお前たちのパーティに人員を補充するつもりだった。ここのところ出動回数が増えたしな。今日も新たにお前たち指名の依頼が2件舞い込んだ。これ以上は働かせられん、リディルには」

「……あ、そうですか」

もはや「俺の心配は?」とは聞くまい。フェイレイはそう思った。

「うん、まあ、人が増えるのは賛成。俺はともかく、リディルは休ませたいから」

「決まりだな」

アリアは金印を書類に押し付けると、フェイレイに差し出した。

「本日をもって、フェイレイ=グリフィノー及びリディル=カーヴァンスをヴァンガード=ユウリ=エインズワースの指導員に任命する」

「了解」

書類を受け取り、フェイレイとリディルはアリアに敬礼した。

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