Faylay~しあわせの魔法
「はっ? えっ? な、ど、どうっ!?」

ガバ、と身を起こして、一人動揺しながら仰け反ると、ズルリ、とベッドから落ちた。器用にも、頭から。

ガン、と目から星が飛び出る勢いで頭の天辺を床に打ちつけ、うつ伏せに倒れる。

「い~てえぇ~!!」

頭を押さえて悶えながら、必死に昨晩の記憶を取り戻そうと努力した。

(なんだ、なんでこうなった。まったく覚えてないんですけど!)

軽くパニックを起こしていると、その騒ぎでリディルの目が開いた。ぼうっとした頭で騒ぎの元凶を見つけると、そろそろと布団から這い出す。

その気配にフェイレイが顔を上げると、ぼんやりとしている翡翠の瞳と目が合った。

「なぁに? 落ちたの?」

任務外でのリディルの寝起きはあまり良い方ではない。今朝もそんな感じだった。

「ああ、うん。落ちたの。頭打った」

そう言うと、リディルはフェイレイの頭に手を伸ばし、赤い髪をそっと撫でてくれた。

(あれ、寝ぼけてる)

昨日目覚めたときもそうだったが、どうやら幼い頃に戻っているらしい。

昔はよく、あまり広くはないベッドに2人で寄り添って眠ったものだ。時々ベッドから転がり落ちるフェイレイの頭を撫でてくれたりもした。それと同じだ。

そうしながら、リディルの頭がかくん、と揺れた。長いハニーブラウンの髪が、サラリと揺れる。

どうやらまだ眠いらしく、何度か頭を揺らした後、前のめりに倒れてきた。

「うわ」

フェイレイは素早く立ち上がり、倒れてくるリディルの身体を受け止めた。

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