Faylay~しあわせの魔法
ブラッディの言葉に、全員食事の手を止めて彼に注目する。

「よろしいですか、リディアーナ様」

ブラッディは正面に座っているリディルに視線を向ける。

リディルは静かに頷いた。

「前に話したとおり、俺は元星府軍にいた。家柄のおかげで少尉とかやってたけど、なんか面倒でさ。ダラダラやってたけど、腕には覚えがあってな。そこを見込まれて、カイン様の護衛を命じられたんだ……」




まだ10歳の皇太子殿下は、聡明で人柄も良く、文武両道の秀でた人物だった。

将来惑星王として、この皇都を治める者として申し分ないと、周りから持て囃されていた。

だが本人はそれに溺れることなく、コツコツと努力を重ねる堅実家でもあり、ブラッディはとんでもない子供のお守りを任された、と思ったのだった。


「サイラスは何故、軍に入隊したのですか?」

サイラスというのは、軍にいた頃のブラッディの名前だ。

カインは真っ直ぐな瞳で、サイラスに尋ねた。

「はぁ。それはまあ、この皇都の民を護りたいからですよ」

「……そうですか」

「というのは建前で、実際のところ、ただ流されるままに生きていたら、ここにいた、という感じですけどね」

本来ならば、軍人として、皇太子護衛官として、こんなことを言うのはご法度なのだろうが。

何もかもが面倒だったサイラスは、思わずぽろっとそんなことを漏らした。

これで咎められてクビにでもなれば万々歳なのだが、なんていう思惑もあった。しかしカインは紫暗の瞳を大きくして、

「サイラスもそうなのですか」

そう、言った。

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