Faylay~しあわせの魔法
「酷いことをする」
カインと笑顔で戯れていた少女と、それを温かく見守っていた母親。
そこは少々捻くれていたサイラスでさえ、心の中をふんわりと優しく包み込まれてしまうような、ぬくもりに満ちた空間だった。
それを見事に壊してくれた宰相らに怒りを覚えるとともに、2人に憐憫の情を抱いた。
現れたサイラスを見て、リディアーナは初め、部屋の隅に転がされていたシャンテルに寄り添い、ガタガタと震えているだけだった。
いつもカインとともに訪れていたサイラスのことは覚えているだろうに、『大人』というだけで恐怖を覚えるようになってしまっていたのだ。
だがそっと頭を撫で、抱きしめてやると、サイラスにしがみついて号泣した。
「リディアーナ様、もう大丈夫だ。絶対に逃がしてやるからな」
力強くそう言うと、シャンテルを抱え上げ、リディアーナを連れて逃げ出した。
反星府軍の兵士に見つかったが、どこかに隠れているクライヴが精霊を召還してくれているおかげで、うまく逃げることが出来ていた。
途中までは。
「くっ……精霊の力が、弱まっている……!」
精霊たちは人間の起こした愚かな争いを恐れ、どこかへ隠れてしまっていたのだ。
それでも、反星府軍の本拠地である宰相の屋敷から逃げられたのは、クライヴの力と、精霊に愛される皇女殿下のおかげだろう。
しかしそれも、ここまでだった。
宰相の屋敷を抜け出したところで、精霊の力は借りられなくなってしまった。
「サイラス!」
もう自分の手で助けるしかないと、クライヴはサイラスのもとへ駆け寄った。
カインと笑顔で戯れていた少女と、それを温かく見守っていた母親。
そこは少々捻くれていたサイラスでさえ、心の中をふんわりと優しく包み込まれてしまうような、ぬくもりに満ちた空間だった。
それを見事に壊してくれた宰相らに怒りを覚えるとともに、2人に憐憫の情を抱いた。
現れたサイラスを見て、リディアーナは初め、部屋の隅に転がされていたシャンテルに寄り添い、ガタガタと震えているだけだった。
いつもカインとともに訪れていたサイラスのことは覚えているだろうに、『大人』というだけで恐怖を覚えるようになってしまっていたのだ。
だがそっと頭を撫で、抱きしめてやると、サイラスにしがみついて号泣した。
「リディアーナ様、もう大丈夫だ。絶対に逃がしてやるからな」
力強くそう言うと、シャンテルを抱え上げ、リディアーナを連れて逃げ出した。
反星府軍の兵士に見つかったが、どこかに隠れているクライヴが精霊を召還してくれているおかげで、うまく逃げることが出来ていた。
途中までは。
「くっ……精霊の力が、弱まっている……!」
精霊たちは人間の起こした愚かな争いを恐れ、どこかへ隠れてしまっていたのだ。
それでも、反星府軍の本拠地である宰相の屋敷から逃げられたのは、クライヴの力と、精霊に愛される皇女殿下のおかげだろう。
しかしそれも、ここまでだった。
宰相の屋敷を抜け出したところで、精霊の力は借りられなくなってしまった。
「サイラス!」
もう自分の手で助けるしかないと、クライヴはサイラスのもとへ駆け寄った。