Faylay~しあわせの魔法
「ジイさん、駄目だろ出てきちゃ! あんた家族があんだろ? 見つかったら狙われるぞ!」
孫の写真を誇らしげに見せてくれた彼に、サイラスは怒鳴る。
「それはお前も同じだろう。ご両親は健在のはずだ!」
「もうとっくに逃がしたさ!」
「私も逃がした。……ふふ、互いに良い覚悟だの」
「んなこと言ってる場合か!」
すぐ背後に、兵士たちが迫ってきていた。
サイラスはシャンテルをクライヴに預けると、剣を引き抜いた。
「俺に物騒なモン向けるヤツは、死ぬぜええええ~!」
これでも皇太子殿下の護衛官。その腕は確かだった。
後に『キャプテン・ブラッディ』などという異名を取ったのも、彼が血塗れの死体の山を築き上げるからだ。
そうしてサイラスが兵士たちを足止めしている間に、クライヴはシャンテルとリディアーナを連れて走った。
高齢で体力のない彼の息苦しさに気付いたシャンテルは、途中で下りると言い、ここに置いて行けと言った。
だが、母を想うリディアーナに手を引かれ、この子を逃がすまでは、と気力を振り絞ってなんとか自分の足で歩き出した。
細い路地を3人で走り、このまま行けば船を用意している船着場までもうすぐ、というところで。
『星府軍』の追っ手に追いつかれた。
反星府軍の宰相は、リディアーナがいなければ自分がクーデター首謀者として捌かれるため、最後まで捕らえておきたい。
そして星府軍は、リディアーナを皇家に仇なす者として捕らえなければならない。
どちらに掴まっても、彼女たちに未来はなかった。
孫の写真を誇らしげに見せてくれた彼に、サイラスは怒鳴る。
「それはお前も同じだろう。ご両親は健在のはずだ!」
「もうとっくに逃がしたさ!」
「私も逃がした。……ふふ、互いに良い覚悟だの」
「んなこと言ってる場合か!」
すぐ背後に、兵士たちが迫ってきていた。
サイラスはシャンテルをクライヴに預けると、剣を引き抜いた。
「俺に物騒なモン向けるヤツは、死ぬぜええええ~!」
これでも皇太子殿下の護衛官。その腕は確かだった。
後に『キャプテン・ブラッディ』などという異名を取ったのも、彼が血塗れの死体の山を築き上げるからだ。
そうしてサイラスが兵士たちを足止めしている間に、クライヴはシャンテルとリディアーナを連れて走った。
高齢で体力のない彼の息苦しさに気付いたシャンテルは、途中で下りると言い、ここに置いて行けと言った。
だが、母を想うリディアーナに手を引かれ、この子を逃がすまでは、と気力を振り絞ってなんとか自分の足で歩き出した。
細い路地を3人で走り、このまま行けば船を用意している船着場までもうすぐ、というところで。
『星府軍』の追っ手に追いつかれた。
反星府軍の宰相は、リディアーナがいなければ自分がクーデター首謀者として捌かれるため、最後まで捕らえておきたい。
そして星府軍は、リディアーナを皇家に仇なす者として捕らえなければならない。
どちらに掴まっても、彼女たちに未来はなかった。