Faylay~しあわせの魔法
リディルにニコリと微笑みかけてから立ち上がったブラッディは、そのまま6人の周りを歩き始める。
「しかし、分からねぇことだらけだ。なんでカイン様が世界を滅ぼそうとしているんだ? しかも、リディアーナ様にまで危害を及ぼすなんて……俺には信じられねぇな。俺が皇宮を出たあとで、一体何があったんだ」
ブラディはローズマリーへ視線をやった。
この10年のことは、船長よりもローズマリーの方が彼を知っている。
「……私にも分かりません。ですが、カインが変わってしまったのは、ここ数ヶ月のことですの。確かに数年前から、少しずつ……おかしなことは、あったのですけれど。それまでは稀代の名君と謳われる、本当に素晴らしい方でしたのよ。カインは努力しましたの。皇宮での自分の地位を不動のものとして、もう、誰も哀しませないようにと……」
『リディアーナ』のことがあったから。
ブラッディも、話を聞いている者たちも、全員がそれを理解した。
ローズマリーは少しの間何か考えていた様子だったが、ハッとして顔を上げた。
「5年前。そう、5年前ですわ」
「え?」
「カインがおかしくなり始めたのは。そう……あれは私がカインと結婚してすぐのことでした。カインが……寝言で女の名前を口走って!」
穏やかなローズマリーの口調が急に激しくなったので、全員肩をビクリとさせた。特にフェイレイとヴァンガードは。
「それで私、恥ずかしながらヤキモチを妬いてしまって。思わず、ガッ! ……と」
拳を振り上げたローズマリーに、更にビクつく一同。
──拳で殴ったんだ。
寝ている皇帝陛下を、グーで。
恐ろしい嫁だ。
「しかし、分からねぇことだらけだ。なんでカイン様が世界を滅ぼそうとしているんだ? しかも、リディアーナ様にまで危害を及ぼすなんて……俺には信じられねぇな。俺が皇宮を出たあとで、一体何があったんだ」
ブラディはローズマリーへ視線をやった。
この10年のことは、船長よりもローズマリーの方が彼を知っている。
「……私にも分かりません。ですが、カインが変わってしまったのは、ここ数ヶ月のことですの。確かに数年前から、少しずつ……おかしなことは、あったのですけれど。それまでは稀代の名君と謳われる、本当に素晴らしい方でしたのよ。カインは努力しましたの。皇宮での自分の地位を不動のものとして、もう、誰も哀しませないようにと……」
『リディアーナ』のことがあったから。
ブラッディも、話を聞いている者たちも、全員がそれを理解した。
ローズマリーは少しの間何か考えていた様子だったが、ハッとして顔を上げた。
「5年前。そう、5年前ですわ」
「え?」
「カインがおかしくなり始めたのは。そう……あれは私がカインと結婚してすぐのことでした。カインが……寝言で女の名前を口走って!」
穏やかなローズマリーの口調が急に激しくなったので、全員肩をビクリとさせた。特にフェイレイとヴァンガードは。
「それで私、恥ずかしながらヤキモチを妬いてしまって。思わず、ガッ! ……と」
拳を振り上げたローズマリーに、更にビクつく一同。
──拳で殴ったんだ。
寝ている皇帝陛下を、グーで。
恐ろしい嫁だ。