Faylay~しあわせの魔法
「でも、カインはまったく心当たりがなかったのですって。……私、女性の名前に聞こえてしまっただけなのかもしれませんと謝りましたら、カインは笑って許してくださいましたわ」

ローズマリーは怒りの表情を和らげると、頬に手をあてて穏やかに微笑んだ。

「そ、それで……その寝言が、惑星王の異変だって?」

フェイレイが嫌な汗をかきながら訊ねると、ローズマリーは頷いた。

「ええ。その後、夢にうなされることが増えて。私、凄く心配でしたわ。色んな検査をしていただきましたけれど、どこにも異常は見つからなくて。きっと政務が忙しくて、嫌な夢ばかり見ていたのかもしれませんけれど。でも……それが始まりだったのかもしれません」

「5年前……か。世界では特に何も異変はありませんでしたし……皇宮でも?」

オズウェルがローズマリーに訊ねる。

「特に変わったことはありませんでしたわ。私が皇宮に入る頃には、誰もカインに逆らう人などいませんでしたし。周りに信頼出来る方もたくさんいました。特に年の近いアレクセイのことを、何でも話せて頼りになる、親友のようだと喜んでもいました。……忙しかった他は、本当に何もなかったのです」

大人たちが話し込むのを横目に見ながら、フェイレイも5年前のことを考える。

「5年前。何やってたっけなー」

「……傭兵として働き出した」

「あ、そうそう」

そんな相槌を打ちながら、リディルが言葉をかけてくれたことに顔を輝かせた。

「そんで、その後にリディルも一緒のパーティに入って~。なんか、色々やらかしたよな、俺たち」

「うん。迷惑かけたね」

頷くリディルに、更に笑顔になるフェイレイ。

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