Faylay~しあわせの魔法
「……いいよ、別に」

我侭な感情だな、と思いつつも素直にはなれず、リディルはぷい、とフェイレイから顔を逸らした。

それでも、このままでは先には進めないことを、リディルは解っていた。

失うのは怖い。けれど、放したくはない。

この我侭な想いを、解き放たなくてはならなかった。心の奥底にある黒いものの正体が解った今こそ、そのときなのではないだろうか。

「……でも、私以外の女の人に、ああいうこと、しないでね」

しかし、想いを伝えようとしてもそう言うのが精一杯。鈍感なフェイレイがリディルの想いに気付くとは思えなかった。

「それはもちろん」

案の定、フェイレイは何も気付かない様子で、下に落ちた毛布をリディルに掛け直してやった。

「リディル以外の人にそんなことするわけないって。リディルだからやったん……」

そこでフェイレイは自問した。

リディルだからやったのか?

リディルだから引ん剥いたのか?

それは下心丸出しなのでは?

「うわあああ」

フェイレイは頭を抱えた。悶える彼はいつものことなので、リディルは我関せずといった様子で海を眺める。

その横で心の中でリディルに対して謝り続けていたフェイレイは、ふと、先程の会話を思い出した。

(あれ?)

頭を抱えていた手を解く。

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