Faylay~しあわせの魔法
「……話はおしまい」

リディルはそう呟くと、ピタリと足を止めた。フェイレイも同時に。

「え?」

話の途中で急に止まってしまった2人に、ヴァンガードも慌てて足を止める。

「ヴァン、話はあとでな。初陣だ」

「えっ? ……魔族ですか!?」

辺りに視線を走らせながら、ヴァンガードは身構える。右太腿にあるホルスターに手をかけ、明るい光の差し込む樹林街道と、フェイレイ、リディルを交互に見る。

彼に気配は感じられなかった。

経験の差なのか。ヴァンガードはそんなところに焦りを感じる。

「いち、に~……」

「16だよ」

フェイレイの声に被せるように、リディルが呟く。

「囲まれたな」

「うん」

そんな会話を聞きながら、ヴァンガードは更に焦る。

「こんな……人が往来する街道にまで、魔族が出るようになったんですか?」

「うん、ここ最近なんだけどな。参るよな~」

僅かに声を震わせるヴァンガードに、フェイレイは頭を掻きながら軽く答える。そして、ヴァンガードにもその気配が分かるようになったとき、初めて腰の後ろの鞘に手を伸ばした。

「よし、距離、OK」

フェイレイはニヤリと笑うと、素早く剣を引き抜いた。
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