Faylay~しあわせの魔法
「そんなに寒いのか……防寒対策してこなかったな」

「そんくらい、貸してやるから大丈夫だ。ただ、問題がな……」

「問題?」

「ああ。説明するから、みんなを食堂に集めろや」

「分かった」

フェイレイは頷くと全員の部屋を回って声をかけ、食堂に集まってもらった。

朝食はバイキング形式で、自分で食べられる分だけを皿に取り分け、テーブルにつく。今朝は冷え込んでいるせいか、暖かいスープが人気だ。

それに手をつけながら、ブラッディが話し出す。

「その問題ってのがな。まず、この船では接岸出来ない。この時期、流氷が分厚すぎてな。陸までは歩くようになる」

「氷の上を? 割れたりしないのか?」

「そこは心配いらない。何メートルもある厚さだ。割れることはない。その氷の上を……これは実際に見ないとなんとも言えないが、何キロか、歩く」

「そんなに」

博識のヴァンガードも、そこは驚きの声を上げる。

「ああ。そして岸に辿り着いたとして、問題はそこからだ。島全体、高い岩壁に覆われている。島の内陸に入り込むには、そこを登らなきゃ行けない」

船長はグルリと全員の顔を見渡した。

「この中で、アイスクライミングの経験のあるヤツは?」

全員が軽く首を横に振った。

ギルドではあらゆる任務を想定して訓練を行うが、国外まで派遣されることはまずないので、雪のほとんど降らないセルティア、及び皇都ギルドの出身者たちは、アイスクライミングの経験はない。

< 292 / 798 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop