Faylay~しあわせの魔法
その後、地図を見ながらブラッディに説明を受け、アイスクライミングに必要な道具一式を用意してもらった。

体力温存のため、いつもよりも睡眠をとり、そして翌日。

ギリギリまで船を岸に寄せてもらったが、猛烈な吹雪で霞む景色の中に島の様子はまったく見えなかった。

地図で確認してみれば、歩く距離はおよそ5キロ。一寸先も見えないような猛吹雪では、歩くだけで体力を削られそうだった。

「陽が出ているのは2時間程度だから、今日は岩壁まで歩くだけにしよう。岩陰があったらそこにテントを張って、明朝登る」

フェイレイの言葉に、全員が頷く。

「俺は星府軍か近づいて来ねぇか、ここで見張ってる。何かあったらこの回線を使え。暗号解読方法は覚えたな?」

「ヴァンと、オズウェルさんたちが覚えた」

フェイレイは自分では覚えられないので、そこは得意分野の人達に任せた。

それに苦笑しながら、ヴァンたちはブラッディの提示する周波数に合わせ、通信機を皮手袋の下へ潜り込ませる。

それからファーのついたフードを被り、鼻までマスクで覆った。

「では、ティナを」

精霊士たち、そしてヴァンガード、ローズマリーも火の精霊ティナを召還する。

寒さに慣れない者達にとって、体感温度氷点下30度という世界はあまりにも過酷だ。少しでもそれを和らげようと、フードの中に目付きの鋭い小さな火の精霊たちを潜り込ませる。

「……俺だけ? 召還出来ないの」

フェイレイはちょっぴり劣等感を抱く。

< 294 / 798 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop