Faylay~しあわせの魔法
軽い音を立てて剣が変形を終えると、視界の端々に白いウサギのような形をした魔族が飛び掛ってくるのが見えた。

ヴァンガードも応戦しようと魔銃を抜こうとすると。

「伏せて」

リディルに頭を押さえつけられた。

「えっ……」

リディルと一緒にフェイレイの後ろで地面に伏せると、ゴオ、と空気が唸りを上げて頬を撫でていった。

視線だけを上げると、フェイレイの振り回した剣から風のようなものが巻き起こり、それが周りを取り囲んでいた魔族たちを一気に吹き飛ばした。

「剣圧!?」

相当な力で振り回されたらしい剣からは、風の精霊の力を得たかのような圧力で魔族を弾き飛ばしてしまった。しかも、一撃で。

「ああ~!」

剣を振り切った状態のままで、フェイレイは声をあげる。

「ごめん、全部倒しちゃった?」

「1匹」

リディルはフェイレイの背後を指差す。剣圧から免れたウサギが一匹、牙を剥き出しにしてフェイレイに飛び掛ってきた。

「ヴァン、撃て!」

身体を硬直させているヴァンガードに、フェイレイが声をかける。

「えっ」

声に動かされ、何とか魔銃を構える。

意識を集中させて魔力を高め、精霊に力を借りて圧縮した力を弾として装填する。

込めたのは火の精霊ティナの力、『火弾』。

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