Faylay~しあわせの魔法
フェイレイの左肩を狙ってやってきた魔族を捕らえ、トリガーを引き絞る。

飛び出た『火弾』は、見事魔族を直撃し、火の粉を散らしながら消えていった。

「さすが最年少候補生、狙い通りに撃つなぁ」

肩越しに飛び散る火の粉を振り返り、フェイレイが言った。

「いえ……すみません、身体が固まってしまって……。声をかけられなければ、フェイレイさんが襲われるところでした」

「フェイは噛み付かれても平気」

ぼそりと呟くリディルに、フェイレイはにこやかに笑う。

「うん、たぶん平気! 母さんに鍛えられたからなー」

昨日みたいにね、と言うフェイレイに、ヴァンガードは笑うことはせず、ただ頭を下げた。

「……すみません」

「大丈夫だよ」

謝るヴァンガードに、リディルは言う。

「あなたは、ちゃんとティナを選んだ。咄嗟に。それは間違いじゃない」

「それは……『ラーヴィ』のような陸棲動物系には火が一番利くって、常識ですから……」

「へー、ちゃんと習ったこと頭に入ってるんだから、凄いぞ!」

こくり、とリディルも頷いて同意する。

「フェイは最初のとき、コケて敵に突っ込んでいったものね。魔族の名前も覚えられなかったし」

「あはは~。でも頭突きという無属性攻撃で倒せたんだから、結果オーライだろ?」

「石頭で良かったね」

「ま、まあね」

そんな会話をしながら、フェイレイは鞘に剣を収める。それを見て、ヴァンガードも魔銃をホルスターに入れた。
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