Faylay~しあわせの魔法
あのとき、フェイレイはまだ8,9歳だったろうか。

父さん、父さんと息を急き切りながら駆け寄ってきたのは。


「父さん、俺、ギルドに入りたいんだ。父さんみたいな剣士になりたい!」


アリアに似て負けん気の強いところはあったが、どちらかと言えば穏やかで、心の優しい少年だったフェイレイが、何故剣士になりたいなどと言い出したのか。そのときは分からなかった。

村の学校で、身体が小さいくせにとクラスメイトに馬鹿にされ、泣かされて帰ってくるのは知っていたし、アリアが密かに稽古をつけてやっているのも知っていた。

それに、傭兵というものは危険なものなのだと、常日頃から言い聞かせてきたはずだった。

ランスとしては、この村で一緒に畑仕事でもしてもらえれば、それで良かったのだが。

「どうしてそう思ったんだい?」

やんわりと聞いてみると、彼は少しだけ泣きそうになりながら、事情を説明してくれた。

その理由は、本当に彼らしいもので。

ランスは優しい子に育ってくれている息子を、誇りに思ったものだった……。



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