Faylay~しあわせの魔法
エインズワース夫妻は、自分たちが父、クライヴの遺志を引き継いで皇女を護ると言い、すぐにセルティアから出て行こうとしていた。

彼らが皇女を護ると言うのなら──。

一度はそう、自分の心に折り合いをつけたはずだった。

それを覆したのが、フェイレイの言葉だったのだ。

「俺、『たくす』って言われたよ。『たくす』って、なにー?」

リディルを見つける前に、誰かにそう言われたというのだ。

「7歳の子供に皇女殿下を託すだと? そんな馬鹿な話があるか」

アリアはそう言ったが、ランスはやんわりと、

「でもフェイは嘘はつかない。精霊たちに導かれて、この子を助けたんだ」

そう、アリアに言った。

「……皇家は精霊に護られる。恐らく、皇女殿下も精霊の加護を受けているのだろうな」

「フェイもそうだろう? この子は、特別に精霊に好かれているようだ。誰かに託されたのだとしたら、そこを見込まれてのこと……なのかもしれないと、俺は思うよ」

アリアとランスは悩んだ。

これは自分たちだけの問題ではないからだ。

悩んで悩んで、悩んだ結果、自分たちの家にリディルを引き取り、星府軍から護る、という選択をしたのだ。

もしフェイレイが本当に『誰か』に皇女殿下を託されたのだとしたら。

それを保護する義務がある。彼の両親として。

「ギルド上層部に話は通した。セルティア王の口添えもあって、全力で隠すことを了承してくれたよ。エインズワース一家も一緒にな」

「それは良かった」

いつまで星府から隠し通せるのか分からなかった。

だが、2人は何があってもリディルと、そしてフェイレイを護ると誓い合った。

『誰か』に託されたからでもあるが、一番は、愛し子たちのために。
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