Faylay~しあわせの魔法
護ると決めてから、アリアは役所に養子縁組の手続きをしようと思い立った。身元不明のままでは、すぐに怪しまれてしまう。

しかしそのとき、すでにリディルへの同情が愛情へと変わっていたアリアは、ランスにこう漏らした。

「なあ。もし、このまま星府に見つからずに平和に過ごせたとしたら。いずれは嫁にも出してやらねばならんのだな」

「うん? そうだね。大金持ちでなくてもいいから、幸せにしてくれる良い青年のもとに嫁がせたいね」

言いながら将来を妄想し、かわいがっていた娘を手放す瞬間の父親の寂しさを思い、喉の奥を熱くするのだった。

そんな風に感じてしまう彼も、十分にリディルに愛情を感じている。

「そうか……そうだよな。娘は嫁にやるものだ。いずれは私の元から去ってしまうのだな……」

この世の終わりでも来るのかという酷い落胆ぶりに、ランスは苦笑しながらこんな提案をした。

「そうだ。フェイと結婚させればいいじゃないか」

ぱあっと明るい笑顔でそう言うランスに、アリアは一瞬目を丸くした後、眉を顰めた。

「いかん。あんな馬鹿息子に皇女殿下のお相手など務まるか!」

「皇女ってことは隠さないと」

「あ、そうだった」

「うん、でも俺は……いいと思うんだけどな。そうすればずっと近くにいてくれるだろうし……」

アリアの気持ちがグラリと傾き始めた。

「かわいい息子と、かわいい嫁。いいなあ」

グラグラと、倒れそうである。

「それにフェイはリディルを託されたんだ。俺たちはフェイを立派な騎士に育て、ずっと護らせる義務が──」

「なるほど、そうだな!」

アリアの目の色が変わった。
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