Faylay~しあわせの魔法
「それならば、戸籍は別にせんといかん。この国の法律では、たとえ血の繋がりがなくとも兄弟は結婚出来んからな。よし、ここはアルのところに頼んで来よう」

アリアはその日のうちに、弟夫婦の戸籍を半ば強制的に借りてきて、養子縁組をさせた。

グリフィノー家で育てられながら、リディルの姓が違ったのはこのためである。

「あくまでも本人たちの意思を尊重しようね」

ランスはそうアリアに言い聞かせながらも、将来本当にフェイレイの嫁になってくれたらいいのに、と願いながら日々を過ごした。

しかしそれは杞憂のことであったようで。

ランスやアリアが特別何もしなくとも、2人は何かの糸に繋がれているようにいつも一緒にいたし、仲良くしていた。

周りに対して心を閉ざしていたリディルは、フェイレイの笑顔につられるように少しずつランスやアリア、村の人達に心を許していった。

徐々に表情が明るくなっていくリディルを見ていると、フェイレイに託した『誰か』は、こういうことも見通していたのだろうかと思えてくる。

そして思う。

自分たちの選択は正しかったのだと。

何があってもこの子達を護ろうと。決意を新たにした。



「お前たち……そろそろ、“幼馴染”の関係をやめたらどうだい?」

そう、ランスは言いかけた。

思春期も過ぎて、もうすぐ成人の彼ら。

「一応、婚約者同士なんだよ?」

親が勝手に決めただけではあるが。

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